ワインには数多くの種類があります。たとえばスティルワインならば赤・白・ロゼの3種類がありますし、またスティルワインとは異なるスパークリングワインなども存在します。
ワインの作り方は種類によって変わってくるので、その「種類による製造方法の違い」について解説していきます。
※なお同じワインの種類に分類されるものであっても、ワイナリー(ワイン醸造所)によって製法が異なる場合があります。今回は、もっとも一般的な製法について取り上げます。
スティルワインの作り方
ワインの中で、もっとも代表的な種類といえば、「スティルワイン」です。スティルワインは発泡がみられないワインのことであり、赤・白・ロゼの3つに分けられます。
まずは「赤ワイン」から取り上げていきましょう。
赤ワインの工程
赤ワインは、文字通り真っ赤な色をしています。しかし赤ワインの原材料となるぶどうは、表皮こそ赤色~黒色ですが、中の果肉は透明です。
この透明な果肉がなぜ赤ワインになるのか?その秘密が、赤ワインの製造方法を知ることで明らかになります。
●赤ワイン
●白ワイン
●ロゼワイン(セニエ法)
収穫・選果
赤ワインに限ったことではありませんが、ワイン造りはまず「ぶどうの収穫」から始まります。地域や気候によって多少のずれはありますが、基本的には収穫時期は秋(9月~10月)ごろです。
摘み方は、手で摘む「手摘み」と、機械で摘む「機械摘み」に分けられます。この2つを並べると前者の方が良いように思われますが、手摘みは「良いぶどうのみを収穫できて、ぶどうを傷つけない」、機械摘みは「もっとも収穫に適した時期に一気に摘み取ることができ、コストも安い」というメリットがそれぞれあります。
その為、一概に「どちらが良い・悪い」といえるものではありません。このように摘み取られたぶどうは、「選果」によって良いものだけがピックアップされます。
徐梗(じょこう)・破砕(はさい)
ぶどうの房から、茎を取り除く作業を「除梗」といいます。茎を取り除いたぶどうは、機械によって砕かれます。機械を通すことでぶどうの果皮が破れ、ぶどうの果汁を絞り出すことができます。
この「除梗」を行うかどうかは、ワイナリー・醸造家によって異なります。すべての茎を取り除く人がいる一方で、茎の一部だけを残したり、すべての茎を残したりする場合もあります。
除梗しない場合は、よりタンニン(ポリフェノールの一種)に富んだ、渋みのあるワインになります。
アルコール発酵・醸し
搾り取られた果汁に酵母を加えて、タルなどの中で熟成させていきます。
「なぜ赤ワインは、原材料のぶどうが透明なのに赤くなるか」の答えが、ここにあります。
赤ワインの場合は、破砕した後のぶどうの皮を取り除くことなく、ぶどうの果汁と一緒にアルコール発酵~醸しを行います。
このときに、ぶどうの皮に存在していたアントシアニンという色素が、ぶどうの果汁にうつるのです。これによって赤ワインは、美しい赤色を持つようになるわけです。
圧搾
醸しが終わったら、ワインをある程度抜き取ります。この抜き取り作業のときに、ワインそのものが持つ重さと、ぶどうの皮などの重みによって自然に流れ出てくるワインがありますが、これは「フリーラン・ワイン」と呼ばれます。
この後、残った果汁を圧縮機に掛けます。この作業の過程で、さらにワインは赤く色づいていくことになります。なおこの段階で出たワインと、先にとれたお酒フリーラン・ワインを合わせて仕立てるワインもあります。
マロラクティック発酵
この段階のワインは今だに非常に荒々しく、とげとげしい味わいにしかなっていません。ワインに含まれているリンゴ酸の影響が非常に大きく、強い酸味を持っています。
この酸味を和らげるために行われるのが、「マロラクティック発酵」です。マロラクティック発酵とは乳酸菌の助けを受けて行われる発酵であり、この段階を経ることでワインはまろやかで優しい風味に変わります。
複数のぶどう果汁をブレンドして作る赤ワインの場合は、この工程の後にブレンドの工程を差し挟むことになります。
なお、マロラクティック発酵は、ほとんどの赤ワイン製造で行われる工程ですが、白ワインでは一部のワインを除いて行われません。
熟成
ここまで終わると、いよいよ「熟成」に入ります。熟成中、底の方に酵母などが溜まりますから、これを除くために、「滓引き(おりびき)」という工程が挟まれます。
この熟成は、ステンレスやオークのタルを使って行われます。どちらで熟成させるかにより、仕上がりの味わいは変わってきます。
オークのタルは、「どこで生まれたタルか」「新ダル率(新しいタルが占める割合)はどれくらいか」によって、味に変化がみられます。
瓶詰
ろ過をしたワインを、いよいよ瓶に詰めていきます。瓶詰の前の段階で安定剤などが入れられることもあります。この安定剤はしばしば悪者のように扱われがちですが、ワインの品質を安定させるために働くものであり、必ずしも悪いというわけではありません。
【補足】パスツリゼーション
ここまでワインの作り方について解説していきましたが、瓶詰をした後で「パスツリゼーション」と呼ばれる作業を行うワインもあります。
パスツリゼーションとは、ワインに熱(70度~100度で、数秒~1分間程度まで)を加える工程です。ワインは瓶のなかでも徐々に発酵するものですが、パスツリゼーションを行うことで発酵を止めて、安定したワインを作ることができます。
ただ、必須の工程というわけではありません。パスツリゼーションを行うことでワインの香りがどうしても損なわれてしまうため、この工程を行わないワイン・ワイナリーもあります。
白ワイン・ロゼワインの工程の違い
上記では赤ワインの作り方を紹介しました。それでは、白ワインやロゼワインの場合はどうなるのでしょうか?
■白ワイン:
白ワインと赤ワインの作り方の大きな違いは、「ぶどうの皮を使うか、それとも使わないか」という点です。
すでに述べた通り、赤ワインの場合は破砕の工程で皮ごと果汁を絞ります。しかし白ワインの場合は、まず先に圧搾をして、果汁とそれ以外を分けます。そして上澄みの果汁のみを取り除き、そこに酵母を加えて作っていきます。これは「デブルバージュ」と呼ばれますが、この工程こそが、透明で美しい白ワインを作ることに必要なものです。
また白ワインの場合は、赤ワインに比べて低温で熟成していくことになります(赤ワインは27度前後、白ワインは17度前後)。これによって、白ワインの香りがひきたつようになります。「バトナージュ」という工程を経て、滓などを取り除き、瓶に詰めていきます。
■ロゼワイン:
美しいピンク色を持つ「ロゼワイン」の作り方は、4通りあります。
- ・セニエ法
- ・混醸法
- ・直接圧搾法
- ・ブレンド法(アッサンブラージュ法)
「セニエ法」はもっともポピュラーなやり方です。黒ぶどうを使って作る方法なのですが、赤ワインのように長く皮と一緒にさせておくのではなく、ある程度色がついた段階で果汁だけを取り除きます。これによって、「ほんのり色づいた状態」に仕上がります。
「混醸法」は白ぶどうと黒ぶどうを合わせて作っていくものです。工程は赤ワイン に近いやり方となります。
「直接圧搾法」は、黒ぶどうを使って、白ワインの製法で作り上げていく方法です。
「ブレンド法」は、やや例外的な製法で、赤ワインと白ワインを混ぜてロゼワインを作る方法です。ただし、ヨーロッパでは白ワインと赤ワインを混ぜてロゼワインを造ることは、EUの規定で禁止されています。(フランスのシャンパーニュは例外としてブレンド法が認められている)
スティルワイン以外の作り方
最後に、以下の「スティルワイン以外のワインの作り方」について紹介していきます。
- ・スパークリングワイン
- ・フォーティファイドワイン
- ・フレーバードワイン
スパークリングワイン
きれいな泡を持つスパークリングワインには、以下の5つがあります。
- ・トラディショナル方式(瓶内二次発酵方式)
- ・トランスファー方式
- ・シャルマ方式
- ・炭酸ガス注入方式
- ・リュラル方式
トラディショナル方式(瓶内二次発酵方式)はシャンパーニュ(シャンパン)を作るときに使われている方式であり、瓶の中で二次発酵を起こして作るものです。数か月かけて作り上げていく方法で、非常に手間がかかります。
トランスファー方式は、トラディショナル方式(瓶内二次発酵方式)をやや簡単にしたもので、価格と味わいの良さを両立できる方式です。
シャルマ方式は、タンクの中で二次発酵 まで済ませてから瓶に詰める方式であり、安価にワインを作ることが可能です。この製法が確立されたことによって、スパークリングワインは一気に一般庶民にも広がりました。
炭酸ガス注入方式は、発酵がすべて済んだワインを瓶の中に入れてから炭酸ガスを入れるもので、ローコストでありながら安定したスパークリングワインを作れる方法でもあります。
田舎方式とも呼ばれるリュラル方式は、香り豊かなワインを作ることに長けた製法です。この方法で作ったワインは、アルコール度数が低くなります。
フォーティファイドワイン
フォーティファイドワインは「酒精強化ワイン」とも呼ばれるものです。非常に高いアルコール度数を誇り、一般的なワインよりも長持ちするのが特徴です。
フォーティファイドワインの場合、一般的に、「ワインに高アルコール度数を誇るお酒(ブランデーなど)を添加して作る」というやり方が取られます。添加のタイミングはそれぞれのお酒によって異なり、糖分がまだ残っている段階でこれを加えることもあれば、完全に発酵しきった後に加えて作る方法もあります。
また、「(添加以外に)どのような処理をするか」は、フォーティファイドワインの種類によって異なります。たとえば甘口が中心となるポートワインの場合はタルの中で3年ほど熟成をさせてから出荷されることが多いですし、マデイラ酒の場合は太陽の熱などを利用して酒を「加熱」して作るといった特徴があります。
フレーバードワイン
フレーバードワインは、「スティルワインに、新しく香草や甘味料、果実などを入れて作るワイン」のことをいいます。
入れる香草・甘味料・果実はさまざまであり、時には普段飲むワインとまったく違う味わいを持つものに変化することもあります。
フレーバードワインの作り方は、一つではありません。たとえば、フレーバードワインの代表例であるベルガモットを買い求める場合、すでに「作られた」後のお酒を瓶に詰めてあるものを購入することになるでしょう。
一方で、サングリアの場合はそのように加工されたものを買い求めることができる一方、家で赤ワインとオレンジなどを合わせて「作っていく」こともできます。
広い意味でフレーバードワインに分類されるホットワインの場合は、温める必要があることから、家で作るケースが比較的多いと思われます。
作り方によって分かれる様々なワインを楽しもう
一口に「ワイン」といっても、その製法は種類によって異なります。製法が変われば色合い、味、香りも変わります。この「違い」を楽しむこともまた、ワインを嗜むためのコツだといえるでしょう。
普段はあまり意識することのない「ワインの製造方法」に注目して、さまざまなワインを飲み比べてみるのも楽しいかもしれませんね。